ナイジェリアの取り組み
ナイジェリアはアフリカ最大の人口を抱え、教育へのAI導入にも関心を高めています。2023年には政府がAIを初等教育のカリキュラムに統合する方針を打ち出し、全国的なAI教育カリキュラムの策定作業が始まりました (How Nigeria stepped up its AI game in 2023)。具体的には、プログラミング教育の一環としてAIの基礎概念を教える内容を小学校段階から盛り込む計画で、これにより次世代の人材がAI時代に必要な知識・スキルを身につけることを目指しています (How Nigeria stepped up its AI game in 2023)。また同時期に、政府主導で国家AI戦略の策定が開始され、NITDA(国家情報技術開発庁)や有識者が集められてAI利活用のロードマップ作成が進められました (How Nigeria stepped up its AI game in 2023)。この国家AI戦略には教育も重要な柱として位置づけられており、AIを活用して国内の「深刻な社会課題を解決する」一環として教育改革が議論されています (How Nigeria stepped up its AI game in 2023)。
他方で、ナイジェリアにおける具体的な教育AI導入事例はまだ限られています。前述のエド州でのパイロットプログラムは、州政府と世界銀行、地元教育団体が協働して実施したもので、政府としてもこうした新技術の効果を検証する段階にあります (From chalkboards to chatbots: Transforming learning in Nigeria, one prompt at a time) (Generative AI Proven to Advance Learning Outcomes in Nigeria - ICTworks)。エド州政府はこの成功を受け、プログラムの継続と他地域展開を検討しており、連邦教育省にも報告が上がっています。課題としては、インフラ(電力・通信)の未整備や教師のITスキル不足が指摘されています (Generative AI Proven to Advance Learning Outcomes in Nigeria - ICTworks)。特に農村部や治安上問題のある地域では、まず学校にコンピュータやインターネットを届けることが優先され、AI活用は中長期的な課題となっています。そのため、政府や支援機関は電力事情を改善するための太陽光発電導入や、オフラインでも使えるAI教材の開発などに注目しています。
総じて、ナイジェリア政府はAIを将来の成長分野と捉えて教育への組み込みを図る初期段階にあり、政策フレームワーク作りと小規模実証が進行中です。教育の質向上や格差是正は喫緊の課題であり、エド州の成功事例はAIが一助となり得ることを示しました。ただし、全国レベルで展開するにはインフラ投資や人材育成が不可欠で、国際的な支援や官民連携も取り入れながら慎重にステップを踏んでいる状況です。